女性の筋トレは男性と何が違う?科学的に解説

1. 女性は男性より筋肉がつきにくい?(はじめに)

「女性は男性に比べて筋肉がつきにくい」とよく言われます。

確かに、

  • 男性の方がテストステロン値が高く

  • 絶対量としての筋肉量も多い

というのは事実です。

ただし、**“トレーニングをしたときの「増え方(相対的増加率)」がどれくらい違うか”**を見た研究では、
イメージほど大きな差はないことが分かってきています。

2. 男女で筋トレ効果にどれくらい差がある?(メタ解析)

まずは、男女の「筋トレへの反応」をまとめて調べたメタ解析から。


文献1:男女の筋肥大・筋力の違いをまとめたメタ解析

文献名
Sex Differences in Resistance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis
(和訳)筋トレにおける性差:システマティックレビューとメタ解析

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32218059/

発表年/著者/雑誌
2020年、Robertsらによるシステマティックレビューで、Sports Medicine誌に掲載されています。


目的

男性と女性が筋トレをしたときに、

    • 筋肥大(筋肉の太さ・量)

    • 筋力(1RMなど)
      変化量にどの程度の性差があるかを整理すること。


方法(概要+箇条書き)

この研究は、既に発表されている多くの筋トレ研究から「男女の結果が比較できるもの」を集めて解析したメタ解析です。

データベース

    • PubMed、Web of Scienceなどから文献検索

研究の条件

    • 男性と女性を含む、または男女でトレーニング効果を比較している研究

    • 一定期間(数週間〜数か月)の筋トレ介入

    • 筋肥大(筋厚・筋断面積・除脂肪体重など)と筋力(1RMなど)のデータあり

解析

    • 男女の「効果量(どれくらい増えたか)」を比較

    • 上肢・下肢など部位ごとに分析


結果

筋肥大

    • 男女ともに筋トレでしっかり筋肥大する

    • 効果量はほぼ同程度で、有意な性差は認められないと報告

下半身の筋力

    • 男女の差は統計的に有意ではなく、ほぼ同程度の伸び

上半身の筋力(相対的な伸び)

    • むしろ女性の方が相対的な増加がやや大きかったと報告(中等度の効果量)。


考察

このメタ解析から分かるポイントは、

  • 「女性は筋肉がつきにくい」というより、
    「元々の筋量が少ないので、同じ%増加でも絶対量が小さく見える」

  • 相対的な伸び(何%増えたか)を見れば、
    女性も男性とほぼ同等に筋肥大・筋力増加する

  • 特に上半身の相対的な筋力増加は、
    女性の方が大きい可能性すらある

ということです。

3. 女性ホルモン(エストロゲン)は筋肉にどう影響する?

女性は男性に比べてテストステロンが少ない一方、
**エストロゲン(エストラジオール)**が高いのが特徴です。

エストロゲンは「女性らしい体つき」だけでなく、
筋肉や腱の保護・回復にも関わっていると考えられています。

  • 筋損傷からの回復を助ける

  • 抗炎症作用を通じて筋肉痛(DOMS)を軽減する可能性

  • 筋タンパク代謝にも関与しているとされる

などが報告されていますが、
「女性だから筋肥大しにくい」という方向に働くホルモンではない点は押さえておきたいところです。


文献2:生理周期と筋トレ反応に関するレビュー

文献名
Effects of Follicular and Luteal Phase-Based Menstrual Cycle Resistance Training on Muscle Strength and Mass
(和訳)卵胞期・黄体期ベースの生理周期を考慮した筋トレが筋力と筋量に与える影響

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35471634/

発表年/著者/雑誌
2022年、Blagroveらによるレビューで、Sports Medicine誌に掲載されています。


目的

  • 生理周期に伴うエストロゲン・プロゲステロンの変動が、
    筋トレによる筋力・筋肥大にどう影響するかを、
    既存研究の結果をまとめて整理すること。


方法(概要+箇条書き)

この研究は、生理周期を考慮した筋トレ研究を集めた総説です。

対象とする研究

    • 生理周期の卵胞期(FP)と黄体期(LP)で、

      • トレーニング頻度やボリュームを変えたもの

      • パフォーマンス・筋量の変化を比較したもの

検討内容

    • 卵胞期の方が無酸素能力や筋力が高くなりやすいという報告

    • 卵胞期ベースで筋トレを集中させると、筋力・筋量がやや伸びやすいとする研究 など


結果

  • 一部の研究で、卵胞期に筋トレを多めに行うと、黄体期メインより筋力や筋量の増加が大きい可能性が示されている。しかし研究間の結果はバラつきが大きく、生理周期の影響を決定的に結論づけるにはデータが不十分という見解。


考察

  • エストロゲンの増加する卵胞期は、
    一時的に筋力やトレーニング耐性が高まりやすい可能性はある。

  • とはいえ、「卵胞期以外は筋トレしてもあまり意味がない」というほどの差は、
    現時点の研究では確認されていない(ここはレビューの結論を踏まえた要約です)。

4. 生理周期と筋トレ:いつやると伸びやすい?

生理周期を直接操作して、
「どのフェーズで筋トレした方が伸びるか?」を調べた研究もあります。


文献3:卵胞期メイン vs 黄体期メインでの筋トレ比較

文献名
Effects of follicular versus luteal phase-based strength training in young women
(和訳)若年女性における卵胞期ベース vs 黄体期ベースの筋トレの効果

URL
https://springerplus.springeropen.com/articles/10.1186/2193-1801-3-668

発表年/著者/雑誌
2014年、Sungらによる研究で、SpringerPlus誌に掲載されています(※2015年以前ですが、生理周期トレーニング研究として代表的なので採用しています)。


目的

卵胞期を中心に筋トレボリュームを多くする場合と、
黄体期を中心にボリュームを多くする場合で、
筋力・筋肥大に差が出るかどうかを検証すること。


方法(説明+箇条書き)

この研究では、同じ女性に対して「片脚ずつ違うパターンのトレーニング」を行うというユニークなデザインを採用しています。

対象

    • 生理周期が安定している若年女性

デザイン

    • 卵胞期ベースのトレーニング脚(FT)

    • 黄体期ベースのトレーニング脚(LT)
      同一被験者内で比較

期間

    • 4か月間の筋トレプログラム

トレーニング内容

レッグプレスなど下肢の筋トレを、

      • 卵胞期に集中的に行う脚

      • 黄体期に集中的に行う脚
        で分ける

測定

    • 筋横断面積(大腿部)

    • 筋線維径(タイプI・II)

    • 筋力(最大等尺性収縮)


結果

卵胞期ベース(FT)の脚では、

    • 筋力

    • 筋線維径(特にタイプII線維)

    • 核数/筋線維比
      が、黄体期ベース(LT)の脚よりも大きく増加。

  • 筋肥大・筋力ともに、卵胞期メインの方が有利という結果。


考察

この研究単体では、

    • 「生理周期を管理できるなら、卵胞期にボリュームを多めにするのはアリ」
      というメッセージになります。

ただし、

    • 被験者数は少数

    • 実際に日常生活の中でここまで厳密に周期を管理できる人は多くない

そのため、現実的には「余裕がある時期に少し頑張る」程度の参考情報として捉えるのが妥当です。


文献4:生理周期と筋トレ適応に関する“総まとめ”レビュー

文献名
Current evidence shows no influence of women's menstrual cycle phase on acute strength performance or adaptations to resistance exercise training
(和訳)現時点のエビデンスは、生理周期が筋力パフォーマンスや筋トレ適応に影響するとは言えないことを示している

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37033884/

発表年/著者/雑誌
2023年、Colenso-Sempleらによる「アンブレラレビュー」で、Frontiers in Physiology誌に掲載されています。


目的

これまで発表されたメタ解析、システマティックレビューをまとめて再評価し、

**「生理周期が筋トレのパフォーマンスや長期的な筋肥大・筋力にどの程度影響するのか」**を俯瞰すること。


方法(概要+箇条書き)

既存のレビュー・メタ解析を収集し、

    • 使用している生理周期判定方法

    • サンプルサイズ

    • 筋力・筋肥大への影響の評価方法

を比較・評価。


結果

既存レビューの中で報告される結果はかなりバラバラ

生理周期による影響を強く主張する研究ほど、

    • ホルモン測定が不十分

    • 生理周期判定が曖昧
      といった方法論上の問題が多い傾向。

著者らの結論:

「現時点のエビデンスからは、生理周期の位相が
筋トレの急性パフォーマンスや長期適応に“明確な影響を与える”と断言するのは時期尚早」


考察

細かい差はある可能性が否定できないものの、
「生理周期のどこかだけ極端に効いて、他は全部ダメ」というような話ではない
という整理が妥当です。

5. 女性が筋トレメニューを組むときのポイント(※ここから推論)

ここからは、上記の研究結果を踏まえた実務的な提案であり、
推論に基づいています。


5-1. 「女性だから特別な種目が必要」というわけではない

男女ともに、

    • ベンチプレス

    • スクワット

    • デッドリフト

    • ロウ系・プレス系

といった基本的なコンパウンド種目が筋肥大と筋力の中心になります。

女性用/男性用といった区別よりも、

    • 負荷設定

    • ボリューム

    • 目的(見た目重視か、重量重視か)

を調整する方が重要です(推論)。


5-2. 「上半身が弱い」女性ほど、上半身トレーニングは伸びしろ大

メタ解析では、上半身の相対的な筋力増加は、むしろ女性の方が大きい可能性が示されています。

つまり、

    • 「腕力がないから…」

    • 「胸とか背中は苦手…」
      という人ほど、伸びしろが大きいとも言えます(推論)。


5-3. 生理周期は「調整の目安」として使う

エビデンスとしては、生理周期で筋トレ効果が劇的に変わるとは言えない

ただし、体感として

  • 生理前〜生理中はしんどい
  • 排卵前後は調子がいい

という人も多いはずです。

そのため、

  • 「調子の良い週に少しだけボリュームを増やす」
  • 「しんどい週はメンテナンス寄りにする」

という形で、「ホルモン」よりも自分の体感ベースで調整するのが現実的だと考えられます。


5-4. 女性のボディメイクなら「お尻・脚・背中」を軸に

これも実務的な提案で、推論に基づいています。

見た目の変化が出やすいのは

    • 臀部(ヒップ)

    • 大腿(前・後ろ)

    • 背中(広背筋・僧帽筋)

週2〜3回トレーニングできるなら、

例:週3メニュー(ざっくり案)

Day1:下半身+ヒップ

    • スクワット/ブルガリアンスクワット

    • ヒップスラスト

    • レッグカール or RDL

Day2:上半身(プレス+ロウ)

    • ベンチ or ダンベルプレス

    • ロウ系(シーテッドロウなど)

    • ショルダープレス

    • 体幹(プランク)

Day3:ヒップ・お尻フォーカス+体幹

    • ヒップスラスト

    • サイドランジ or ステップアップ

    • ケーブルキックバック

    • プランク/サイドプランク

負荷設定は、

  • 基本 8〜15回で限界が来る重さ

  • 最後の2〜3回が「かなりキツい」くらいを目安に(推論)

といった形で十分に筋肥大を狙えます。

6. まとめ

女性も、筋トレによる筋肥大・筋力アップの“相対的な伸び”は男性とほぼ同じ。
→ 上半身の相対的な筋力増加は、女性の方が大きいという報告もある。

エストロゲンは、

  • 筋損傷からの回復
  • 抗炎症

などに関わる可能性があり、「筋肉がつかないホルモン」ではない

生理周期に合わせたトレーニングで効果が上がるという研究もあるが、

全体を総括した最新レビューでは、**「周期による明確な有利/不利を断言するのはまだ早い」**とされている。

実務的には、男女で種目を大きく分ける必要はなく、目的(見た目・筋量・筋力)に応じて
ボリュームと負荷・頻度を調整すればOK

7. 参考文献

  1. Roberts BM, et al. Sex Differences in Resistance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2020.
    URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32218059/

  2. Blagrove RC, et al. Effects of Follicular and Luteal Phase-Based Menstrual Cycle Resistance Training on Muscle Strength and Mass. Sports Med. 2022.
    URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35471634/

  3. Sung E, et al. Effects of follicular versus luteal phase-based strength training in young women. SpringerPlus. 2014;3:668.
    URL: https://springerplus.springeropen.com/articles/10.1186/2193-1801-3-668

  4. Colenso-Semple L, et al. Current evidence shows no influence of women's menstrual cycle phase on acute strength performance or adaptations to resistance exercise training. Front Physiol. 2023.
    URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37033884/

  5. Liu D, et al. Skeletal muscle gene expression in response to resistance exercise: sex specific regulation. Med Sci Sports Exerc. 2010.
    URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21106073/

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