筋トレとタンパク質補充は筋肥大など体つくりに重要であることは言うまでもありません。
人によってはプロテインを飲まれている方も多いかと思います。そんな「筋トレ×食」のつながりについて今回取り上げますのは「卵」についてです。
過去にプロテインに関する記事もございます。ぜひ興味があれば合わせてご覧ください。
「卵×筋トレ」というと皆様は何をイメージしますでしょうか。
人によっては映画ロッキーで主人公役のシルベスタスタローンことロッキーが生卵をコップで飲むというシーンをイメージされる方もいるのではないでしょうか。(海外の卵を生で食すのはとても危険な行為なので真似しないように!)
また、人によってはマッスル北村をイメージされる方もいるかと思います。マッスル北村は毎日の食事として卵を20~30個、牛乳を2~3L、サバの缶詰3缶、プロテイン粉末300gを摂取していたといわれています。
いずれにおいても、「卵×筋トレ」は肉体改造を行っていくにあたって切っては切れない関係にあります。
卵は完全栄養食品?
アレルギーを除いて卵を食べたことのない日本人はほぼ皆無といっても過言ではないと思います。
ほぼ毎日何らかしらの形で食される卵ですが、その栄養素は人間が活動する上で欠かすことのできない栄養素が多く含まれています。食物繊維とビタミンCは含まれていませんが、それ以外の栄養素をすべて含んでいます。そのため、卵は「完全栄養食品」と呼ばれています。なかでも、アミノ酸、ビタミン、ミネラルなどがバランスよく含まれていることが特徴となっており、アミノ酸のバランスを示す「アミノ酸スコア」は最高点の100点となっています。
加熱しても卵の栄養価は大きく変わらないことも使い勝手の良いとされる所以です。
卵を加熱するとビタミンB群などがやや減少するものの、基本的に栄養価の大きな変化は見られません。卵焼きやゆで卵にしても体が必要としている栄養を摂取できるという点においても卵はとても優秀であると考えられます。
私の崇拝しておりますボディビルダーの1人こと山本義徳先生もご自身のYoutubeチャンネルにて「卵とその食べ方」についてコメントされており、アミノ酸スコアの前身であるプロテインスコアでも100点であったことや栄養素、そしてオススメの食べ方などをご紹介されております。(ぜひ興味がある方はチェックしてみてください!)
さて、そんな卵についてですが、一部のボディビルダーでは卵白だけを摂取するという食事を選択されていることがあるようです。
実際のところ、卵はどのように食べればよいのでしょうか?
今回はそんな疑問にお答えするため卵白と全卵を比較した研究文献を紹介したいと思います!
卵白vs全卵!筋トレ後に食べたほうが良いのは??①
文献名:Consumption of whole eggs promotes greater stimulation of postexercise muscle protein synthesis than consumption of isonitrogenous amounts of egg whites in young men
(若年男性において、全卵を摂取すると、等窒素量の卵白を摂取するよりも運動後の筋タンパク質合成が促進される。)
本研究はベルギーにあるカソリーケ大学のWim Derave氏らによって発表され2003年にJournal of Applied Physiologyに掲載されたものです。
目的
若年男性を対象に,運動回復期に全卵と卵白を摂取した際の全身および筋肉のタンパク質代謝反応を比較することを目的とした。
対象
レジスタンストレーニングを行っている男性10名(年齢21±1歳、体重88±3kg、体脂肪:16%±1%(平均±SEMs))
プロトコル
クロスオーバー試験で、上記対象に、L-[ring-2H5]フェニルアラニンとL-[1-13C]ロイシンの持続注入を行い、レジスタンス運動を1回行った。運動後、参加者はL-[5,5,5-2H3]ロイシンで内包された全卵(タンパク質18g、脂肪17g)または卵白(タンパク質18g、脂肪0g)を摂取した。血液と筋生検を繰り返し採取し、全身のロイシン動態、筋内シグナル、筋原線維タンパク質合成を評価した。
結果
蛋白質由来のロイシンの血漿中出現率は,全卵よりも卵白を摂取した方が早かった(P = 0.01)。食後300分間のロイシンの血漿中利用率は、全卵(68%±1%)と卵白(66%±2%)で同程度(P=0.75)であり、全身の純ロイシンバランスにも差はなかった(P=0.27)。全卵、卵白ともに、運動後の回復期にmammalian target of rapamycin complex 1、ribosomal protein S6 kinase 1、eukaryotic translation initiation factor 4E-binding protein 1のリン酸化が増加した(いずれもP < 0.05)。しかし、全卵の摂取は、卵白の摂取に比べて、運動後の筋原線維タンパク質合成反応を大きく増加させた(P=0.04)。
結論としては 筋トレ直後に全卵を摂取すると、若年男性のタンパク質含有量が一致しているにもかかわらず、卵白を摂取した場合よりも筋原線維タンパク質合成を大きく促進することが示された。今回のデータは,栄養価の高い食品とタンパク質濃度の高い食品の摂取は,タンパク質濃度の高い食品と比較して,筋肉の同化を異なる形で刺激することを示している。
卵白vs全卵!筋トレ後に食べたほうが良いのは??②
文献名:Whole Egg Vs. Egg White Ingestion During 12 weeks of Resistance Training in Trained Young Males: A Randomized Controlled Trial
(全卵と卵白の比較 トレーニングをしている若い男性が12週間のレジスタンストレーニング中に卵白を摂取した場合。無作為化比較試験)
本研究はイランにあるイスファハン大学のBagheri氏らによって発表され2021年2月にJournal of Strength and Conditioning Researchに掲載された最新のものです。
目的
レジスタンストレーニングを行っている若い男性を対象に、12週間のレジスタンストレーニング(RT)中の全卵摂取と卵白摂取が、筋断面積、身体組成、筋力、無酸素パワーに及ぼす影響を比較した。
対象
レジスタンストレーニングを行っている若い男性30名
プロトコル
レジスタンストレーニングを行っている若い男性30名を、2つのグループのいずれかに無作為に割り付けた。
全卵+RT(WER;n=15)または卵白+RT(ERT;n=15)。
全卵+RTではRTの直後に全卵3個を摂取し、ERTではRTの直後に卵白6個からなる等窒素量を摂取した。12週間の全身起伏周期性RT(週3回)の前後に,膝伸展筋量と断面積(コンピュータ断層撮影),除脂肪体重と体脂肪率(生体電気インピーダンス),筋力(膝伸展力,ハンドグリップ力),Wingate(サイクルエルゴメーター),およびホルモンの血清濃度を評価した。
結果
体脂肪率、血清テストステロン、膝伸展力、握力には有意なグループ×時間の交互作用が見られ、WERでより大きな改善が見られた。
膝伸展筋量、断面積、除脂肪体重、無酸素性パワー、およびその他の血中ホルモンについては、時間による有意な主効果(p<0.05)が認められた。
WER群ではERT群に比べて除脂肪体重の変化が大きい傾向(p=0.06)が見られた。
レジスタンストレーニングを行った若い男性において、運動後の全卵摂取は、運動後の卵白摂取と比較して、筋肉量にグループ差がないにもかかわらず、膝関節伸展力、ハンドグリップ力、テストステロンを増加させ、体脂肪率を減少させた。筋力と体脂肪率の向上を目的としたRTプログラムでは、全卵の摂取が望ましいと考えられる。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は「筋トレ×食」のなかで「卵」をピックアップして文献を紹介致しました。
・卵は豊富な栄養価より「完全栄養食品」とも呼ばれている。
・プロテインスコア、アミノ酸スコアともに100点となっている。
・加熱しても栄養価が変わりにくい
・筋トレ直後に全卵を摂取すると、卵白を摂取した場合よりも筋原線維タンパク質合成を大きく促進することが示された。
・体脂肪率、血清テストステロン、膝伸展力、握力には有意なグループ×時間の交互作用が見られ、WER(全卵+RT)でより大きな改善が見られた。
・WER群ではERT群に比べて除脂肪体重の変化が大きい傾向(p=0.06)が見られた。←ダイエット効果!?
参考文献
Whole Egg Vs. Egg White Ingestion During 12 weeks of Resistance Training in Trained Young Males: A Randomized Controlled Trial
Consumption of whole eggs promotes greater stimulation of postexercise muscle protein synthesis than consumption of isonitrogenous amounts of egg whites in young men
https://academic.oup.com/ajcn/article/106/6/1401/4823156?login=true