「筋トレは最高のソリューションである」
これは数多くの著書を出版しているマッチョ社長ことテストステロン氏が著書のタイトルです。
彼はTwitterで日頃の筋トレ名言?などをつぶやいており、この著書はそれらをまとめたものとなっています。
そんな彼の有名なつぶやきの1つが以下となっております。
死にてぇ、と思ったら3ヶ月だけ筋トレしてみる。
仕事もプライベートもダメで八方塞がり。死にてぇって思ったら3ヶ月だけ筋トレしてみてくれ。テストステロンという支配欲を司るホルモンが分泌されてネガティブな気持ちを打ち消してくれる。それに加えて筋肉がつき良い身体になれば気分は最高だ。見た目が良くなれば気分も良くなる。非常に単純な事だ。
死にてえって思ったら、筋肉を殺そう
手首の代わりに筋繊維をカットしろ
このように、筋トレはメンタルヘルスにも有効であることを彼は多く名言として発信しております。
私自身、トレーニーとしてそれら意見には強く賛同しております。
しかし、実際はどうなのでしょうか?ということで、今回は筋トレはメンタルヘルスに有効なのかについて科学していきたいと思います!
①運動習慣のない奴ほど運動すべし!?
A comparison of the effects of hatha yoga and resistance exercise on mental health and well-being in sedentary adults: A pilot study
(座りがちな成人のメンタルヘルスとウェルビーイングに対するハタヨガ(※)とレジスタンスエクササイズの効果の比較:パイロット研究)
この文献は医学誌であるComplementary Therapies in Medicine(補完療法医学)のVolume 22, Issue 3, June 2014, Pages 433-440に掲載されたものです。
※補足:「ハタヨガ」は、肉体的なアーサナ(ポーズ)と呼吸法に重点を置いたヨガの流派です。
ポーズをとりながら正しい呼吸法を行うことで、心をリラックスさせ、精神面のバランスをコントロールして整えることを目的としたものです。
研究対象
運動習慣のない51名の参加者(平均年齢 25.6±5.7 歳)
目的
座りがちな現代成人に対してハタヨガとレジスタンスエクササイズがメンタルヘルスと幸福に及ぼす影響を比較する。
プロトコル
無作為化比較試験
①上記51名の参加者を3つのグループにランダムで分ける。
・ハタヨガグループ
・筋トレグループ
・コントロール(運動なし)グループ
②ハタヨガグループと筋トレグループは、週3日のセッションを7週間実施する。
評価方法は各被験者をセッションの前後でRosenberg Self-Esteemスケール、Beck Depression Inventory、Body Cathexisスケール、Nottingham Health ProfileおよびVisual Analog Scaleを用いたセッション前後の疲労を評価する。
結果
ハタヨガと筋トレグループでは全てのアウトカム指標に関して、大幅な改善が見られた。
コントロール(運動なし)には改善は見られなかった。
ハタヨガは、前後の疲労感、自尊心、生活の質をさらに改善し、一方、筋トレはボディイメージをより改善しました。
ハタヨガと筋トレは、同様のレベルでうつ症状を減少させました。
これより、普段運動する習慣のない人は週3日の運動習慣より疲れにくさや自信を得ることが分かりました。
また、筋トレではボディイメージを向上させ、うつ症状も減らしております。
②多くの研究で筋トレとメンタルヘルスは関連付けられている?!
Mental Health Benefits of Strength Training in Adults
(成人の筋力トレーニングにおけるメンタルヘルスのメリット)
この文献はジョージア大学のPatrick J. O'Connorらによって2010年に発表されたものであり、Lifestyle Medicineに掲載されたものです。
目的
複数のランダム化比較試験を対象にメタ解析を実施し、筋力トレーニングが不安・慢性疼痛・認知・抑うつ・疲労症状・自尊心・睡眠に影響を与えるかどうかを調べました。
結果
当分析において、筋力トレが健康な成人の不安症状の軽減に関連しているという結論を裏付けました。
また、腰痛、変形性関節症および線維筋痛症の患者における疼痛強度の低下。高齢者の認知力の改善。
うつ病の高齢者における睡眠の質の改善
うつ病患者と線維筋痛症患者におけるうつ病の症状の軽減(疲労症状の軽減、自尊心の向上。)
このように、数多くの研究が筋トレとメンタルヘルスを関連付けております。
①で紹介したように筋トレがうつ症状の改善に関与していることはもちろん、うつ病患者にも一定の効果があることが示されております!
➂しかし、やりすぎは禁物!?
Muscle Dysmorphia Symptomatology and Associated Psychological Features in Bodybuilders and Non-Bodybuilder Resistance Trainers: A Systematic Review and Meta-Analysis
(ボディービルダーと非ボディービルダーのレジスタンストレーナーにおける身体醜形障がいの症候学と関連する心理的特徴:系統的レビューとメタ分析)
この研究はオーストラリアのシドニー大学のLachlan Mitchellらによって2016年に発表されたものです。2017年に医学誌Sports Medicineに掲載されております。
身体醜形障がい症とは、極度の低い自己価値感に関連して、自分の身体や美醜に極度にこだわる症状である(wikiより)
ここでは、そのうちの1種である筋異形症(MD)について検討したものとなっております。
MDとはサイズ感と筋肉量の自己認識の欠如に関連付けられており、分かりやすくいうと第3者からみたら十分にマッチョなのに、本人的には自身がとても細く見えるというものです。
この研究では過去の複数の研究をメタ解析することで以下の目的を示すものとなっております。
目的
ボディービルダーと、ボディービルダーでないマッチョでMDの症状を比較し、心理的およびその他の特性を特定すること。
プロトコル
関連するデータベースを最も早いレコードから2015年2月まで検索。
各MDサブスケールについて、グループ間の標準化平均差(効果サイズ[ES])と95%信頼区間(CI)を計算し、5つ以上の研究で同じMDツールを使用した場合にメタ分析を行う。
MDに関連する心理的またはその他の特性を説明するデータも抽出した。
結果
2135件の研究が検索にヒットした。
そのうち、5880名の参加者(ボディビルダー: 1895名、ボディビルダー以外のマッチョ: 3523名、コントロール(非マッチョ): 462名)に関する31の分析データが対象として適格であった。
評価を行ったところ、MD症状はボディービルダーのほうがそれ以外に比べ大きかった。
~高いとMDになりやすかった項目~
不安症(r 0.32–0.42; p≤0.01)、社会的体格不安症(r 0.26–0.75; p <0.01)、鬱病(r 0.23–0.53; p≤0.01)、神経症(r 0.38; p < 0.001)、完全主義(r 0.35; p <0.05)
~低いとMDになりやすかった項目~
自己概念(r –0.32〜–0.36; p <0.01)、自尊心(r –0.42〜–0.47; p <0.01)
詰まる所、過度な筋トレや減量などボディーメイクを行う人ほど理想と現実のギャップがあり、精神症状をきたしやすくなると考えられます。
④まとめ
筋トレはメンタルに影響を与えることが判明しております。
特に普段運動する習慣がない人ほど優位であり、幸福感を与えるという結果もあります。
一方で、トレーニングを習慣的に行っている群では目指すものとのギャップに伴いメンタルを病むものもいます。
やはり筋トレは最高のソリューションであることがご理解いただけたかと思います!!
適度なトレーニングを心掛け、楽しく筋トレライフを行いましょう!!
参考文献
①https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0965229914000387
②https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1559827610368771
➂https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-016-0564-3