音楽と筋トレの関係についての第2弾!
前回は筋トレ中に音楽を聴くことの影響などについてご紹介させていただきました。
まだという方はぜひ合わせてご一読いただけたらと存じます。
しかしながら、「運動の時だけ音楽を聴く」という人はごく少数ではないでしょうか。
多くの方が普段からワイヤレスイヤホンなどで音楽を聴きながら街中を歩く、音楽を聴きながら筋トレの準備をするのではないでしょうか。
そこで今回は運動中ではなく、運動前ないしウォーミングアップ時に音楽を聴くことの影響を中心に研究文献を紹介したいと思います。
ベンチプレス前に音楽を聴くと記録が伸びる!?
文献名:Effect of Pre-Exercise Music on Bench Press Power, Velocity, and Repetition Volume
(運動前の音楽がベンチプレスのパワー、速度、および反復回数に及ぼす影響)
この研究はアメリカのサンフォード大学のクリストファー氏らによって発表され2021年3月にSAGE journalに掲載されたものです。
目的
運動前に音楽を聴くことがベンチプレスのパフォーマンスに与える影響を調べること
対象
筋トレ習慣のある男性10名
(年齢=22.8歳、SD=5.8歳、身長=173.7cm、SD=8.3cm、体重=81.0kg、SD=18.2kg)
プロトコル
クロスオーバー・カウンターバランス研究デザインを行った。参加者は、(a)音楽なし(NM)と(b)運動前の音楽(PreExM)を48時間以上の間隔をおいて2回、ベンチプレス運動の試行を行った。各試行では、ウォーミングアップの後、参加者は3分間、音楽を聴くか、音楽を聴かないかを選択した。この3分間の後、75%の1反復最大値(1RPM)で最大の爆発的意図を持ってベンチプレスの反復を1セット行いました。ロータリーエンコーダーを用いて,バーベル動作のパワーと速度を測定した。再び音楽を聴きながら,あるいは音楽を聴かずに3分間の休息をとった後,参加者は1RMの75%で失敗までの反復回数(RTF)をもう1セットこなした。この2セット目の反復運動の直後に,運動意欲を視覚的アナログスケール(VAS)で測定した。
結果
PreExM条件では、平均パワー出力(p = 0.005; d = 0.792)とバーベル速度(p = 0.015; d = 0.722)が増加した。RTFはPreExM対NMトライアルで有意に高く(p=0.002、d=0.985)、モチベーションはPreExM対NMトライアルで有意に高かった(p=0.001、d=0.932)。これらの結果から、ベンチプレスの運動前に音楽を聴くことで、筋力の爆発性と筋力持久力が向上することが示唆された。実用的な観点から、筋トレの直前に音楽を聴くという選択肢があるアスリートは、その使用が有益であると考えられる。
テンションが上がるような音楽ならば、さらに効果アップ?!
文献名:Effects of Preferred and Non-Preferred Warm-Up Music on Resistance Exercise Performance
(好みのウォーミングアップ音楽とそうでない音楽がレジスタンス運動のパフォーマンスに及ぼす影響)
この研究は前の文献と引き続きアメリカのサンフォード大学のクリストファー氏らによって発表されたもので、こちらは2020年12月にJournal of Functional Morphology and Kinesiology(JFMK)に掲載されたものです。
目的
本研究の目的は、好みのウォーミングアップ音楽と好みでないウォーミングアップ音楽を聴くことが、上半身の筋トレパフォーマンスに及ぼす影響を調べることである。
対象
筋トレを行っている男性
プロトコル
好ましいウォーミングアップ音楽(PREF)と好ましくないウォーミングアップ音楽(NON-PREF)という異なる条件で、それぞれ2回のベンチプレス試験に参加してもらった。それぞれの実験では、参加者は標準的なベンチプレスのウォームアップ中にPREFまたはNON-PREFの音楽を聴いた。ウォーミングアップ後,運動意欲を視覚的アナログスケールで測定し,その後,1RMの75%の負荷でRTF(Repetition to Failure)を1分間の休息を挟んで2セット実施した。バーベルの平均速度の測定には,リニア・ポジション・トランスデューサーを用いた。また,各セット後にRPE(Rate of Perceived Exertion)を測定した。RTF,速度,RPE,およびモチベーションを分析した。
結果
RTFは、PREFとNON-PREFの間で有意に高かった(p = 0.001)が、平均バーベル速度は変化しなかった(p = 0.777)。RPEはPREFとNON-PREFの試行で有意な差はなかった(p = 0.735)。運動に対するモチベーションは、PREFとNON-PREFの間で有意に高かった(p < 0.001)。ウォームアップ時にPREFの音楽を聴くと、その後のベンチプレス運動時のRTFパフォーマンスが向上することが分かった。しかし、バーベル速度はほとんど影響を受けなかった。知覚的労作は試験間で同程度であったが,運動へのモチベーションはPREFウォーミングアップ音楽の試験で顕著に向上した。これらの結果から、筋トレで最大の努力をする前にウォームアップ音楽を聴く競技者は,自分の好みの音楽を確実に選択することで,パフォーマンスを最適化できることが示唆された。
まとめ
・ウォーミングアップ中に音楽を聴くことはベンチプレスにおける平均パワー出力(p = 0.005; d = 0.792)とバーベル速度(p = 0.015; d = 0.722)が増加させた。
⇒バーベル速度は音楽の好みには関係なく、聴くことで有意に増加する。
・ベンチプレスの反復回数は直前の音楽を聴くことで音楽を聴かないグループより有意に多くなった。(p=0.002、d=0.985)
⇒好みの音楽を聴くことで反復回数は効果を最大化することができる可能性がある。
・モチベーションは音楽を聴くことで有意に高かった(p=0.001、d=0.932)
参考文献
・Effect of Pre-Exercise Music on Bench Press Power, Velocity, and Repetition Volume
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/00315125211002406
‣Effects of Preferred and Non-Preferred Warm-Up Music on Resistance Exercise Performance