睡眠と筋肥大には昔から深い関わりがあるとされています。
筋トレを行った後、睡眠時に筋回復があることで筋肥大につながるという「睡眠から筋肉への作用」はもちろん、一方で筋トレ(運動)を行うことで睡眠の質も改善されるという「筋トレから睡眠への作用」という相互に深い関わりがあります。
今回はそのうち後述の運動が睡眠に及ぼす効果について各研究報告より紹介していきたいと思います。
➀筋トレ(運動)の快眠への影響「筋トレ(運動)は行ったほうが良い!!」
文献名:Exercise training improves sleep quality: A randomized controlled trial
(運動トレーニングは睡眠の質を向上させる:無作為化比較試験)
この研究はスペイン/グラナダにあるグラナダ大学のルーカス氏らによって発表され、2020年1月にEuropean Journal of Clinical Investigationに掲載されたものとなっております。
目的
運動と睡眠の質の関係を調べる。
対象
・69人の中年座りっぱなしの成人(男女比率/47.3%:52.7%)
プロトコルと評価
被験者は以下の4つのグループに無作為割り付けされた。
(a)対照群
(b)世界保健機関(WHO)からの身体活動勧告
(c)高強度インターバルトレーニング(HIIT)
(d)全身電気刺激トレーニング(HIITEMS)を追加する高強度インターバルトレーニング
睡眠の質はピッツバーグの(PSQI)スケールおよび加速度計を使用して評価された。
結果
グループ(b)、(c)、(d)の介入群は未介入のグループ(a)と比較しPSQIグローバルスコアが有意に低値(すべてP<0.022)を示した。
HIIT-EMSグループは、すべての加速度計パラメータを改善し、総睡眠時間と睡眠効率が高く、睡眠発症後の覚醒率が低くなりました(すべてP<0.016)。
介入群における睡眠の質パラメータのグループ間に違いは見つかりませんでした。
本文献のまとめ
本文献はあくまでアンケート形式の本人主観の結果ではありますが、運動の介入を行うことで座りっぱなしの中年男女の睡眠の質における改善がみられました。
各介入群のうちHIIT-EMSトレーニングは、運動介入の12週間後に客観的な睡眠の質パラメータ(総睡眠時間、睡眠効率および睡眠発症後の覚醒)の改善を示しています。しかしながらHIIT-EMSトレーニングはパーソナルトレーニング下でされるケースが多く、個人で実践できる割合は専門性の面から非常に少ないです。また、いずれにおいても多額の費用が掛かるため新規での実践には大きな壁があると考えられます。そのため、本文献で参考にすべき考え方として
・運動を実践することで睡眠の質を改善する(運動しないよりしたほうが良い!)
・HIITという短時間で実践できる運動でも優位な改善がみられる(高強度短時間でもOK!)
の大きく2点であると考えられます。
また、もともと筋トレ習慣のある方においてもHIITトレーニングをトレーニングの最後に実践することで基礎代謝のさらなる向上と今回の睡眠の質という側面からもメリットのとても大きいものであると言えます。
しかしながら、本ブログのトレーニー読者は運動習慣がとっくにある方々であると考え、次に紹介するのは「いつ運動するのか?」という疑問にお答えしたいと思います。
②いつ?どれくらい?運動したらいいのか!?
文献名:The Effect of Timing and Type of Exercise on the Quality of Sleep in Trained Individuals
(訓練を受けた個人の睡眠の質に及ぼす運動のタイミングと種類の影響)
この研究はアメリカのイリノイ州にあるコンコルディア大学のバージェス氏らによって発表され2020年8月にInt J Exerc Sci. 2020; 13(7): 837–858.に掲載されているものです。
目的
運動のタイミングと強度が睡眠の質に及ぼす影響。運動のタイミングと強度がレクリエーション被験者の睡眠の質に大きく影響を与えるかどうかを理解する。
対象
参加者にはフロリダ州南東部の男女が含まれ、地元のレクリエーション施設から募集した。参加者には18-45歳で、週に少なくとも3日間、有酸素、嫌気性、または筋トレに従事することを要求。36人が参加し、最終的な分析には合計34人のデータが使用された。
表 1は、性別別の個体の頻度と割合、および AM (午前 11 時 59 分以前)(n = 17) と PM (12-11:59 pm)(n = 17) 運動群と中程度 (MOD) 運動の強度グループ (150分/wk) を示します。(n = 17)または激しい(VIG)運動(75分/wk用)(n = 17) 強度 (表 1).
プロトコルと評価
参加した参加者は、AMまたはPMエクササイズグループに分けられた。彼らはアクティグラフ時計を身に着けた7日間の定量的、準実験的な探索的研究に参加しました。参加者の強度はまた、基準カットポイントに基づいて適度な強度または高強度にグループ化された。得られたデータは要因ANOVAを用いて分析し、参加者の睡眠の質に運動時間と強度の間に有意な差があるかどうかを調べた。
結果
この研究を通じて見られた睡眠の4つの尺度の中で、時間群(AM vs PM)または強度群(MOD対VIG)のいずれにも睡眠の質に有意な差はなかった。合計睡眠時間、睡眠発症遅延、睡眠効率%、睡眠発症後のスリープ解除(TST、SOL、SE、およびWASO)。両方の結果は、AM群とPM群とMOD群およびVIG群と、有意差を示さなかった。これらの結果は、運動強度やタイミングが睡眠の質に影響を与えていなかった。
本文献のまとめ
文献①では運動が睡眠の質を改善した内容を紹介しましたが、文献②では時間や強度は関係ないということが示されました。では、どれくらいの頻度で運動を行うとよいのでしょうか。
これは文献①よりWHOの推奨運動ガイドラインに示されております。軽~中強度の運動では週に150時間以上、高強度では週75時間以上と示されております。
例えばジョギングやウォーキングでは1日1時間で考えると週3日以上、HIITでは1日20分で考えると週に約4日となります。
いずれにおいても睡眠の質で考えると、1つの基準として週3~4日程度の運動習慣がいいといえます。
参照元
・Exercise training improves sleep quality: A randomized controlled trial
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/eci.13202
・The Effect of Timing and Type of Exercise on the Quality of Sleep in Trained Individuals
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7449340/