ファスティングって何?
「食べなければ痩せる!」これはダイエットにおける極論とも言えます。
断食はイスラム教徒ではラマダンとして古くから行われてきた習慣であり、一種の文化であります。
日本では聞きなれない習慣のため一般的には修行とも受け取られるこの行為ですが、近年の健康志向に伴い欧米では「ファスティング」として注目されています。
ファスティングには明確な定義はないものの、一般的には固形物の代わりにスムージー等の発酵ドリンクなどで必要最低限の栄養素を摂り生活することとされているようです。
ここでラマダン断食と異なる点としては明確に1日のうちの摂取制限を設けるのではなく、生活を変えずに食内容をのみを変えるという点です。
また、ファスティングを行うことで様々なメリットがあるとされております。
・健康寿命の増加(ラットを用いた研究にて)
・集中力の増加
・美肌効果
・即効性が高い
一方で以下のようなデメリットもあるとされております。
・睡眠不足や性欲減退など空腹時の作用がある
・期間終了後にリバウンドしやすい
このように、ファスティングを行うには正しい知識を持ったうえで強い意志を持つことが必要とされております。
そのため、最近ではプチ断食という名称などで1日のうち一部の食事のみスムージーに切り替えたり、摂取量を減らすことで継続しやすくすることで実施されることも見受けられます。
また、ダイエットを考えている方は過去にダイエット関連記事もありますので、ぜひご参照下さい。
誰でもファスティングは効果があるの?
健康志向の人でも、現在細身の方から太めの方まで様々いるかと思います。
では、ファスティングはどんな人に有効なのでしょうか。
ここではドイツのオーベルリンゲンにあるクリニックよりフランソワーズ氏らがまとめた文献からの抜粋を紹介します。
文献名:Unravelling the health effects of fasting: a long road from obesity treatment to healthy life span increase and improved cognition
(ファスティングの健康効果を解明する:肥満治療から健康寿命の増加と改善された認知への長い道のり)
抜粋➀
CALERIE(エネルギー摂取量の減少による長期的な影響の包括的評価)研究では、BMIを22~28の間に登録した参加者に対して、これまでの食生活の25%のカロリー制限を2年間実施した。結果としてカロリー制限をした被験者は、健康と気分の大幅に改善を示した。体重、体脂肪、脂肪量、脂肪フリー質量、および心代謝リスク因子、すなわち脂質、BP、C反応性タンパク質、インスリン感受性指数はコントロール群と比較して有意に減少した
抜粋②
TEMPO(肥満における最適代謝健康および体組成を促進するためのエネルギー操作の種類)試験は、12ヶ月間の25〜35%のカロリー制限(長期の軽~中程度実施の群)と4ヶ月間の65〜75%のカロリー制限(短期間の重度実施の群)の影響を比較し、後者の群にはその後8ヶ月間より中程度のエネルギー制限を実施し比較した。両方の介入は、1日あたりのベースライン体重の1.0 g /kgの所定のタンパク質摂取量を行っていた。閉経後の101人の女性のうち、65-75%のカロリー制限の女性は、より多くの腹部皮下および内臓脂肪組織を失ったが、彼らはまた、総体重減少に比例して、より多くの全身および太ももの筋肉の無駄のない質量を失った。さらに、重度のグループに割り当てられた参加者は、より総股関節のミネラル密度を失った。全体的に、これらの変化は筋力の違いに関連していなかったが、男性や閉経後の女性の食物摂取の操作と同様に慎重な努力を行うべきである。
つまり、軽度の肥満傾向の方にとって軽度のカロリー制限はポジティブな効果を示します。
しかしながら、重度のカロリー制限は脂肪量を減らすことには寄与するが骨密度減少もみられることから、閉経後の女性を中心に実施の際にはミネラルやタンパク質量の摂取を意識して実施する必要があります。
筋力に影響ってあるの?
筋トレされる方にとって、最も重要なのはここではないでしょうか。
今回はポルトガルのリスボン大学、神経筋研究室のJoana氏らにより2020年に発表された研究を紹介したいと思います。
文献名:Effects of Intermittent Fasting on Specific Exercise Performance Outcomes: A Systematic Review Including Meta-Analysis
(間欠的断食が特定の運動パフォーマンスのアウトカムに及ぼす効果。メタアナリシスを含むシステマティックレビュー)
目的
間欠的断食(IF)は、ラマダン期間中のアスリートや、除脂肪体重を維持または増加させながら脂肪率を低下させる意思のある人を対象に研究されてきた。このシステマティックレビューの目的は、パフォーマンスの結果に対する IF の効果をまとめることであった。
IF:一般的には食後16~48時間の断食期間を設けるやり方を指します。
方法
結果
・筋力の変化
12の研究ではIFと筋力の関連性に関するデータが提示され、約18%の研究で有意な変化が観察された。これらの研究のいくつかは、ラマダンIFで垂直跳びの高さ(k = 1)がわずかに増加し、1日の中で時間制限的に実施する断食では上半身と下半身の胴回り(k = 1)または上腕の腕周(k = 1)が増加するという満足のいく結果を報告した。対照的に、他の研究ではラマダンIF後の最大筋力(k = 1)と最大随意収縮(k = 2)の有意な低下が報告された。7つの研究では、IF前とIF後の時間点を比較しても筋力に有意な変化はなかったと報告されている。
・有酸素運動能力の変化
15の研究では有酸素能力の適応が報告されており、そのうち約36%がこの特定のアウトカムで有意な変化を得ていた。いくつかの研究では、ラマダンIF後のVO2max(k = 1)、心拍数(k = 1)、VCO2(k = 1)、およびラマダンIFとTRFプロトコルの両方でパフォーマンス(スプリントパフォーマンス、ランニングスピードまたは身体活動の低下; k = 4)の有意な減少を得た。VO2maxの有意な増加と3000mランニングタイムの改善を示した報告は1件のみであった。研究の約18%(k = 5)は、VO2max、最大心拍数とランニングスピードのために変更されていない値を示した後ラマダンIF(k = 3)またはポストTRF(k = 2)。
まとめ
➀ファスティングには様々なメリット・デメリットがあるものの、メリットを最大化するためには正しい知識を持ったうえで強い意志を持つことが必要とされております。
②軽度の肥満傾向の方にとって軽度のカロリー制限はポジティブな効果を示します。
しかしながら、重度のカロリー制限は脂肪量を減らすことには寄与するが骨密度減少もみられることから、閉経後の女性を中心に実施の際にはミネラルやタンパク質量の摂取を意識して実施する必要があります。
③減量における筋力の変化は全体の18%で有意な増加を示したものの、最大筋力の低下や変化なしなど様々な報告があり、実施の際には注意して行う必要があると考えられます。
④有酸素運動能力では多くの報告で減量により持久力の有意な低下を示した。
参照元
・Unravelling the health effects of fasting: a long road from obesity treatment to healthy life span increase and improved cognition
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/07853890.2020.1770849
・Effects of Intermittent Fasting on Specific Exercise Performance Outcomes: A Systematic Review Including Meta-Analysis