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【効果まとめ】マスク着用の筋トレは高地トレーニング?【後編】

前編はこちら

マスクを着けて肺機能アップ?? ※2

文献名:Effect of Wearing the Elevation Training Mask on Aerobic Capacity, Lung Function, and Hematological Variables

(有酸素運動能力、肺機能、および血液学的変数に対する高度トレーニングマスクの着用の影響)

この論文はJ Sports Sci Med. 2016 Jun; 15(2): 379–386. に掲載されており、先の論文同様に米ウィスコンシン大学ラクロス校よりJohn P. Porcari氏らによって発表されたものです。

研究対象

・適度に訓練された24人の男女

研究目的

・標高トレーニングマスク2.0(ETM)を用いることで標高トレーニングをシミュレートし、有酸素能力(VO2max)、持久力、肺機能が向上するか確認する。

図1:標高トレーニングマスク2.0(ETM)

研究プロトコル

用語解説
・VO2MAX 有酸素能力:1分間に体重1kgあたりにどれだけの酸素を取り込めるかという能力値
・peak power output (PPO):ピーク出力
・VT 1回換気量:1回の呼吸で交換されるガス量
・RCT 呼吸性代償閾値:二酸化炭素放出に対して換気が過剰になり始める閾値

➀被験者をランダムにマスク着用グループと着用しないグループに分けます。(参考:下表1)

表1:各グループ内容

②6週間の高強度エルゴメータートレーニングを実施する。

週2回のトレーニングを6週間(計12回)

各トレーニング内容(30分/回)

・ウォーミングアップ 5分

・高強度トレーニング 20分

・クールダウン 5分

➂トレーニング前後のVO2max、肺機能、最大吸気圧、ヘモグロビン、ヘマトクリットを測定し評価する。

結果

・トレーニング前後の肺機能と血液学的変数の変化を以下表2に示す。男性と女性の反応に有意差はなかったため、グループデータのみを表示。

→ トレーニング期間中、FVC、FEV1、FEV1 / FVC(%)、MIP、Hb、またはHctのグループ内またはグループ間での有意な変化はなかった。

表2:結果➀

・最大運動テスト中に測定された変数の変化を表3に示す。男性と女性の反応に有意差はなかったため、グループデータのみを表示。

→ マスク着用と未着用の両グループでVO2maxとPPOが大幅に増加した。しかし、グループ間の有意差なし。

検査前後で、VT、RCT、RCTでのVT、POが大幅に改善されたのはマスクグループのみ。 RCTおよび、RCT条件でのPOの変化のみグループ間の有意差あり。

表3:結果②

考察

本研究では、VO2maxとPPOでマスク着用、未着用ともに大幅に改善しました。しかしながら有意差がつかなかったため、マスクの有効性は示すことができなかった。

しかし、マスク着用グループではVT、PO、RCT、RCTでVT、POが大幅に改善しました。

これよりマスク着用することで呼吸に用いられる筋肉が改善され、呼吸における活動が効率化されていると言えます。有意差の付いたRCTおよび、RCT条件でのPOの変化からもこれは分かります。

つまり、呼吸の機能は改善されましたが、だからと言って体の筋肉量が増えたわけではなくパワーは変わりません。

さらにざっくりいうと「マスクを着けて持久力が上がるか分からないけど、息切れはしにくくなるよ」ってことです。

まとめ メリットとデメリット

これら文献の内容をマスク着用のメリット、デメリットとしてまとめると以下のようになります。

マスクを着用するメリット

・筋疲労が起きにくくなる可能性あり

・呼吸筋が改善され、息が上がりにくくなる。

マスクを着用するデメリット

・慣れないと集中力が下がります。

・低酸素などからくる頭痛など体調不良のリスク

・マスクをつけたからと言って筋肉が肥大しやすくなったりはしない。

 

あとがき

呼吸筋が持久力に及ぼす影響は、研究途中であり、十分なデータがまだ揃っておりません。

そのため、トレーニングマスクは有用であるという説明や効果がないという説明ともに証明しきれていないというのが現状です。

その中でも効果がないという意見として最も多いのが「高地トレーニングと同様ではない」というものです。

それら研究結果の傾向としてトレーニングマスクは「呼吸筋のトレーニングに適したトレーニング器具である」という事が言われております。

事実、今回紹介しました文献においても可能であれば低気圧・低酸素環境での運動(実際に高地に赴いてトレーニング)をオススメしております。

しかしながら、それは一般的には難しいと思います。

疑似的な高地トレーニングルームで、トレーニングマスクを使い、より負荷をコントロールしやすいトレーニングをするというのがベストかもしれません。

 

参考文献・出典元

※1:https://cdn.journals.lww.com/nsca-jscr/Abstract/2018/02000/Acute_Effects_of_the_Elevation_Training_Mask_on.22.aspx

※2:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4879455/

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